風俗営業許可の3つの要件とは

風俗営業許可の要件と保全対象施設

風俗営業許可の要件は申請する以前にクリアしなければならない基準のことです。

この基準をクリアしないと原則的に風俗営業許可がもらえません。
そしてこの基準は大きく分けると3つに分けることができます。

① 人的基準

まず一つ目の要件の「人の基準」ですがこれは風営法第4条に記載されています。

風俗営業者は店舗ごとに店舗の業務を管理する者の中から管理者を1人選任しなければなりません。

管理者とは店長のような立場の人のことをいいます。

申請自体は管理者以外でも出来るのですが人的基準には管理者も含まれるので申請者と管理者は同一人物のほうが効率面で考えるといいと思います。

風営適正化法第4条第1項を要約

1. 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
2. 一年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられた日から五年を経過しない者など
3. 暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為と認めるに足りる相当な理由がある者
4. アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
5. 風俗営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者
6. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。
7. 法人の役員のうちに第一号から第七号の二までのいずれかに該当する者があるもの
など

人的基準では風俗営業許可を申請する者が風俗営業者として適正な人格であることを求める趣旨になっております。

5年以内に警察に捕まったり一定以上の罰金などを支払ったことがある方は風俗営業許可を申請できません。 通常は気にする必要はないと思いますがもし気になる部分があれば事前に警察に相談されるといいと思います。

また法人として申請する場合は役員全員が対象になります。

なお、この人的要件に問題がなければ該当者全員分の誓約書が必要になります。

② 建物設備等の基準

建物については風営法第4条第2項第1号に構造設備が施行規則第7条の基準に適合しないときと記載されています。

風俗営業許可では営業をする店舗の建物設備等の基準が細かく決まっております。

もし内装工事をする予定があれば事前に基準をクリアするように担当者との打ち合わせが必要になります。

ここでは1号営業の建物設備等の基準を記載します。

風俗営業許可1号営業の基準
1. 客室の床面積は、16.5㎡以上、和風は9.5㎡以上。客室が1室の場合は制限なし
2. 客室の内部が外部から容易に見通すことが出来ないものであること
3. 客室の内部に見通しを妨げるものを設けないこと
4. 善良の風俗等を害するおそれのある写真、広告物、装飾等の設備を設けないこと
5. 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。
6. 店舗内の照度が5ルクス以下とならないように必要な構造又は設備を有すること
7. 騒音、振動の数値が条例の基準以下にならないよう必要な構造又は設備を有すること

補足
ここで特に注意する点は(1)と(6)です。

(1) の面積16,5㎡以上あるかどうかです。 客室の1室2室とは原則部屋ごとに分かれるのですが、例え客室が1室でも全体の見通しが悪い構造だと2室とみなされる場合があります。

この場合は、ここからそこまでが1室、そこからあそこまでが1室と客室の面積を区切って申請をしなければなりません。

またそれぞれの客室が16,5㎡以上の広さを有していなければなりません。 16,5㎡とは畳10枚分なのでかなりの広さが必要になります。

(2) の客室の内部が外部から容易に見通すことが出来ないものであることの対処法として、くもりガラスやスモークシールなどを貼ることがあります。

(3) の客室の内部に見通しを妨げるものとは高さが1m以上のものをいいます。 仕切り板や柱などが該当します。 観葉植物も該当する場合があります。

(6) の5ルクスとは本や雑誌の文字が普通に読める程度の明るさになります。

しかし、照明下だけではなく客室の何処を測っても5ルクス以上になっていることが原則ですので余裕を持って10ルクス程度の明るさを維持するようなお店を目指しましょう。

また、スライダックス(明るさを調整するもの)があるお店は申請は通りませんので撤去が必要です。

③ 場所的基準

最後が場所的基準になります。

場所的基準をクリアすることが風俗営業許可の要になります。

場所的基準はさらに「用途地域規制」と「保全対象施設からの距離制限」の2つに分かれます。

① 用途地域規制

風俗営業許可・深夜営業許可では営業ができる地域が限られています。

そもそも私達が住む地域とは駅前などの繁華街や住宅地など用途によっていくつかに分かれています。

そして風俗営業許可はこの地域では営業してもよいがこの地域では営業してはならないというように地域によって営業出来るかどうかが規制されております。

この営業出切る地域と営業出来ない地域というのを地域規制といいます。

基本的に住居地域・住居専用地域では風俗営業許可・深夜営業許可は取得出来ません。

風俗営業許可を申請する場合は建物を借りる前に営業できる地域かどうかを調べる必要があります。

AJ行政事務所ではこの地域規制を調べるところから業務を開始します。

しかし営業する店舗が駅前だったり、営業する建物内に同じ業種を営業している風俗営業店舗、深夜営業店舗があれば住居地域・住居専用地域以外だと考えて大丈夫だと思います。

用途地域は市町村役場の都市計画課などで閲覧できます。

最近はインターネットからでも閲覧できる市町村役場が多いです。

営業可能な地域

  第一種
・第二種
低層住居
専用地域
第一種
・第二種
中高層住居
専用地域
第一種
・第二種
住居地域
準住居地域
近隣商業地域
・商業地域
準工業地域
・工業地域
工業専用地域
風俗営業許可 × × ×
深夜営業許可 × × ×

② 保全対象施設からの距離制限

保全対象施設とは学校や病院、児童福祉施設などのことをいいます。

これらの施設の周りでは風俗営業を営業するのはふさわしくないという理由でこれらの施設から一定の距離を離れないと風俗営業を営業することは出来ません。

必要な距離は営業所の用途地域によって異なります。

営業する店舗が用途地域の営業可能エリアだとしても近くに保全対象施設があれば許可がおりないことがあります。

注意しなければならないのは保全対象施設の判断は審査の時点でされるということです。

どういうことかというと、調査時と審査時では1~2ヶ月ほど時差があるので、仮に調査時に問題がなくても審査時に保全対象施設が新たにできていれば許可が下りなくなってしまうということです。

因みに保全対象施設の有無は届出などが出されていればよく実際に保全対象施設の建物が建っている必要はありません。

また営業する店舗が居抜きの場合でも安心出来ません。

前の店舗が風俗営業許可を取得していたからといって前回の許可取得時から新しく保全対象施設が近くに出来ていれば例え同じ場所でも許可が下りないことがあります。

このように風俗営業許可は絶対に取れるとはいえない許可となっています。

もしも営業する店舗が保全対象施設の距離制限に該当してしまった場合はAJ行政書士事務所では業務終了となります。

保全対象施設とは

保全対象施設
施設名 備考
学校 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、盲学校、養護学校など
図書館 地方公共団体、日本赤十字社、一般社団法人、一般財団法人が設置するもの
児童福祉施設 児童養護施設、保育所、助産施設、児童発達支援センターなど
病院 歯科医院を含む医療施設で病床が20以上のもの
診療所 歯科医院を含む医療施設で病床が19以下のもの

保全対象施設との距離制限

用途地域 保全対象施設(東京都の場合) 距離制限
商業地域 ① 学校(大学を除く)
② 図書館
③ 児童福祉施設(助産施設を除く)
50m
① 大学
② 病院(第1種助産施設を含む)
③ 診療所(8人以上の患者を入院させることができる施設)
20m
① 第2種助産施設
② 診療所(7人以下の患者を入院させることができる施設)
10m
近隣商業地域 ① 学校(大学を除く)
② 図書館
③ 児童福祉施設(助産施設を除く)
100m
① 大学
② 病院(第1種助産施設を含む)
③ 診療所(8人以上の患者を入院させることができる施設)
50m
① 第2種助産施設
② 診療所(7人以下の患者を入院させることができる施設)
20m
工業地域・その他 ① 学校
② 図書館
③ 児童福祉施設
④ 病院
⑤ 第2種助産施設
⑥ 診療所(患者を入院させることができる施設)
100m